2021/05/28  
「ただ音楽だけがそこにある」世界

バーンインノイズの音質を追及していったら、最近「音楽がそこにある」と言って良い領域に到達した。
テストに使ったのはnightowl carbon, エージング用アンプとしてHD120, 評価用アンプとしてPMA-60を使用した。

傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はものすごく良い。「音楽がそこにある」って感じられる音。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段)の+580段程上。と言うことはHD650(標準ケーブル)の1050段上ってところ。奥行きは20m。

位置づけとしてはこんな感じ。解像度で言うとHPT-700の330%増し、ドノーマルのER4SRの1280%増しというなんだかよく分からん感じになってるけど、とにかく凄まじく高解像なのは確か。だがER4SRでもテスト中のバーンインノイズを流すと7〜8割の解像度は出たので、今回nightowl carbonに使ったノイズを使うと、nightowl carbonとさほど変わらない解像度は出るんじゃないかと思う。ER4SRは歪が多いのか音色の面ではそこまで伸びていってくれないのでnightowl carbonほど音楽的には鳴らないと思うけど。

あと奥行きが20mに押しとどまっているが、これは音質を追及していく過程で音像が大きくなってより立体的になってきたから。今まで一番奥行きが良かった状態だと58mくらいだったと思うが、その状態から考えると1/3になっていることになる。だが、少なくともその時より音質が落ちたって感じは一切ない。定位が良くなって、ドライバー周りのモヤ付き感も無くなって、、、音のドライバーへの張り付き感なんて今までもなかったし、スピーカーも完璧に消えていたのだが、今までは張り付き感があったと感じるほど張り付き感が無くなっている。奥行きは減ったが定位は間違いなく良くなっている。



 表題の「音楽がそこにある」と言う話だが、「音楽がそこにある」と言うと定位が良くて音が見えるレベルだとか色んな捉え方があると思うが、今回の場合は、出てくる音が自然で癖が少なくて、あまりにしっくりくる音を奏でるので、機械の癖を意識しないで済むという意味である。機械の癖を意識しないで済むと言うことは「このヘッドホンはこういう傾向で〜」とかそういうことを意識しないということだ。だから自然と音楽に意識が行く。ただ高解像とか空間表現が良いってだけでは「音楽がそこにある」って感じにはならないんだな。今回の条件ではnightowl carbonでは達成できたが、SRH1540では少し及ばない感じだった。SRH1540は「このヘッドホンは〜」と機械の存在を意識してしまう。解像度とか感情表現とかそういったことではそこまで大きな差はないと思うのだが、「ただ音楽だけがそこにある」かそうでないかの間には大きな壁がある。「ただ音楽だけがそこにある」と音楽だけに没入できる。この感覚を経験すると「このヘッドホンは〜」と意識してしまうレベルの音だと、こりゃあかんな・・・となってしまう。まるで目から鱗だ。そうなってくると音への要求レベルもかなり上がってしまうな。今までは「音が氏んでたらダメ。感情表現豊かで音楽的でないとダメ。」と言う感じだったが、これが「「このヘッドホンは〜」と意識した段階でダメ」となるのだから。SRH1540でも「音楽がそこにある」と言う感じまであと半歩と言うところなので再生環境次第ではもっていけそうな感じだけど。

もちろん、機械の癖を完全になくすのは理論的にありえないことだ。そもそも評価に使っているのがPMA-60だし、nightowl carbonは特別に優れたヘッドホンだが、PMA-60は5万のヘッドホン専用複合機に毛が生えたくらいの音質だ。今回使ったノイズが極限的に優れていても、この布陣で機械の癖を完全に無くすのは無理があるだろう。そもそも何を使おうが理論的に不可能なんだけど。なので結局は機械の癖を完全に消しているのではなく、どれだけしっくりくる音を出して機械の音を意識させないかと言うことだと思う。自然さも極めるほど機械の存在を意識しなくなっていくということか。当たり前の話ではあるけど。
当然だがこのしっくり度は個人差があるので、今回の音質レベル以下でも「音楽がそこにある」って感じられる人もいれば、今回の音質レベルでは「全然こんなんじゃ足りねーよ」って人もいると思う。
個人的にも今回はようやく「音楽がそこにある」と言って良い領域に一歩足を踏み入れたって感じなので、まだまだ精進が必要だと思う。今までこのヘッドホンは自然だとかなんとか言って褒めてたけど、あくまで相対的にってだけで、決して「機械の癖を忘れて音楽に没入できる」ほどの自然さではないんだな。そんなものは一つもなかった。でもこういう音が出せると分かれば、次に追及すべき目標も分かってくる。この方向性で追求すれば誰もが「音楽がそこにある」と没入できるようになるはずだ。






2021/05/28 執筆    
2021/05/28 公開